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シカゴ発・アメリカ郊外生活

開かれたコミュニティーへの扉【vol.1】

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はじめまして!イリノイ

 2007年の10月末、住み慣れたカリフォルニアを離れ、夫の新しい仕事場(研究所)のあるイリノイ州・シカゴ郊外の町に引っ越しました。
車に荷物を詰め込んでアメリカ大陸を西から東へほぼ横断。気候や民族構成はもちろん、物価、音楽、人々の価値観などもがらりと変わっていくのを目の当たりにし、これから先見知らぬ土地でいったいどんな生活が待ち受けているのか、何もつてのない“外国人”の私がうまく馴染んでいけるのか・・・と、普段ノーテンキな私にもさすがに不安がよぎったものでした。
 しかし今となってはそんな心配もどこへやら。郊外の小さな町に下ろした根が大地に元気に脈々と伸びつつあります。
私にその“元気の基”をくれたのは、四季折々に姿を変える美しい住環境と、住民を温かく迎え入れ育んでくれる地域ホスピタリティーの数々でした。もともと四国のど田舎で育った私にとって、ここはまるで“古き良き子ども時代”を思い出させてくれる場所だったのです。

 このコラムでは、私がここで体験するさまざまな小さな出来事を通じて、実際にその土地で暮らしてみないとわからない、アメリカのごく日常の生活や地域の人たちとのふれあいなどをお伝えしていきたいと思います。

これぞまさしく、アメリカンサバーブ(郊外)

 『Pleasantville』(邦題は「カラー・オブ・ハート」)という映画をご存知でしょうか?この映画の舞台は、1950年代の古き良きアメリカの架空の田舎町Pleasantville。イリノイで私たちが住まいを構えたWarrenville(ウォーレンビル)やその近郊は、まさにそのPleasantvilleそのもののような町です。
 シカゴから西に約50キロ。大都会の喧騒とは無縁ののんびりとした静かなコミュニティー、古い家並みと新しい家並みとが整然と共存し、町の中心から一歩離れるとまだ手付かずの大自然が悠々と横たわる、いかにも平和なアメリカンサバーブといった風情を醸し出しています。玄関に星条旗を掲げている家も多く、信仰深く愛国心にあふれたどちらかというとコンサバティブな白人層が多く住むのもサバーブの特徴でしょうか。

「かれこれ30年以上シカゴに行ったことがない」

 驚くことに、この辺りに住む人たちの多くはこう口を揃えます。(車でわずか30分ほどの距離なのに!)郊外で産まれ育ち、結婚後も近隣に居を構える人たちがいかに多いことか。
 その理由は、都会(シカゴ)にわざわざ出かけて行かなくても生活に必要かつ十分な設備や娯楽が整っていること、そして何より住民が「この町が好き」という強い愛着を持っているからでしょう。
 コミュニティーへの信頼や住民同士のつながりが、人々を土地にしっかりと根付かせ、ここから離れ難くしているのです。そして新参者の私も、間もなくこれを実感することになったのでした。

“小さなお役所” ホームオーナー・アソシエーション

HOAを通して市から届いた、ひと箱分のWelcomeセット

 引越し1ヶ月後に、私たちは予定外にもタウンホーム(いわゆる「長屋」のような軒続きの一軒屋)を購入しました。
 アメリカには「ホームオーナー・アソシエーション(HOA)」と呼ばれる“町内会”のような組織があり、このHOAがコミュニティー内の管理・運営を行う仕組みになっています。
 タウンホームのオーナーになるとまず、コミュニティー内の規則ブックが渡されます。家の外装を変える場合の届出、飼ってもいいペットの大きさと数、子どもが遊ぶ場所のルール、芝の手入れ、ホリデーイルミネーションの設置期間、バスケットネットの設置場所ルール・・・。いかにもアメリカといったものもあり読んでいるだけでも面白いものです。
 また、住民専用の“コミュニティーWebサイト”もこまめに更新されており、新たに決まったルールやピクニックのお知らせなどの各種連絡のほか、住民からの質問や意見なども積極的に受け付けています。
 住民同士オープンに情報が共有できるのは大歓迎なのですが、現在売りに出されている住戸の販売価格一覧や、実際の契約価格が「月刊コミュニティー新聞」に載っていたときには、正直かなりびっくりしましたが(笑)
 住民票の存在しないアメリカでは、HOAに帰属することが“住民登録”のようなもの。それだけに、ご近所同士のつながりが密になるのかもしれません。

春の到来を告げる、Spring CleaningとGarage Sale

道行く車にアピールするガレージセールの巨大看板

商談よりもおしゃべりに花が咲く(?)

 厳しく長いイリノイの冬。−20℃にもなる極寒の日々を耐え忍んだぶん、雪が溶けて春になると人々は待ちきれなかったかのように一斉に外に出てあいさつを交わし、家まわりの手入れを始めます。
これが、"Spring Cleaning"と呼ばれる、いわゆる季節の大掃除。雪に埋もれていた枯れた樹木の残骸などを一掃し、痛んだ住まいを修繕し、庭の土を入れ替えて新しい苗を植え、これで夏への準備完了です。
  また、この時期によく見かけるのがコミュニティー主催の合同ガレージセール。各家庭で不要になったものを家の庭先に広げて即売するのですが、中にはBBQをやりながら出店している人たちもいて、どちらかというとお祭り気分。人々の格好の、井戸端会議ならぬ“ガレージセール会議”の場になっています。

盛りだくさんの地域イベントを運営する、Park District。

シーズンごとに無料配布されるPDのパンフレット(上の写真)には参加したくなるプログラム(下の写真)が満載。

 イリノイ州では、各市町村には必ず“Park District(パーク・ディストリクト:以下PD)”と呼ばれる機関があり、このPDが年間を通じて全ての住民向けに様々なイベントを企画・運営しています。
 各種習い事や、シカゴ・カブスの試合観戦などの各日帰りツアー、子ども向けのサマーキャンプ、フィットネスクラブの運営など、文化系からスポーツ系まで内容も盛りだくさん、しかも利用料金がとても安いのが魅力です。
 私も早速フィットネスのフリーパスを購入し、せっせと通っていますが、料金は3ヶ月間利用し放題で48ドル(約5,000円ちょっと)。また、フィットネスにはチャイルドケアシステム($2/時間)もあるので、小さい子どもを持つ親も安心して通えます。

ご近所づきあいは“庭ほめ”から始まる

お隣さんの玄関にも「コンテスト参加者」のサインが。

 PD主催のイベントでちょっと変わったところで、先日「ガーデン・コンテスト」という催しがありました。
 花や緑にあふれた町づくりを奨励している「America in Bloom」という全国組織の後援を得て年に一度行われるこのコンテスト、住民なら誰でもエントリーすることができ、7月中ごろに審査が行われて入賞者(家)が決まります。日ごろ丹精こめて作り上げたご自慢の庭を披露する絶好の機会とあって、エントリーも年々増えているとか。

 さて、先日その入賞者が決定し、翌週末には早速入賞者7軒のお庭をめぐる“ウォーキングツアー”が開かれました。ツアーといっても、各自が決められた時間内に地図を見ながら自由に訪問するだけ。
 近所のおうちに興味津々だった私も、さっそく参加してみることにしました。
 「昨年引っ越してきたばかりなのでまだガーデニングも初心者なんです。今日はお勉強にきました」と挨拶する私を、オーナーさんは快く自慢のお庭に案内してくれます。
 「この花は日陰に置くあっという間に増えるのよ」「庭造りは年季が必要だよ。いっぺんにやろうとしないことだね」
 お庭談義から始まって身の上話までどんどんとおしゃべりがはずみます。すっかり仲良くなった私は、これをきっかけにまたたびたび庭を見せていただくことになりました。

あいにくの雨にもかかわらず、絶え間なく訪問客が訪れていました。

主催者も朝からツアーのお手伝い

お宅の前の「Stopサイン」がツアーの目印

 これ以外にも、HOAが主催する“今月のお宅賞”コンテストもあり、これに選ばれると年間の共益費(約150ドル)が無料!(もっともそれ以上に元手はかかりますが・・・)

 こういったガーデン・コンテストは、ガーデニング好きなアメリカ人の心を巧みにくすぐりつつ、地域の景観や住民同士のコミュニケーションの向上にも役立つ、まさに一石三鳥の効果ありというわけです。何より、私のように新たに住民に加わった者にとっては、コミュニティーへの“扉”となってやさしく招き入れてくれている、そんな気がするのでした。

次回予告

次回は、「子供向けでも大人向けでもない。地域主催のファミリーFUNイベント」についてお届けします。どうぞお楽しみに!

長野尚子(ながのしょうこ)さん
長野尚子(ながのしょうこ)
アメリカ在住フリーライター。2001年、大手出版社のディレクターを退職後、単身アメリカへ留学。その後帰国し子育て関連誌の編集者を経て、結婚を機に2006年3月より再びカリフォルニア州バークレー市へ。主に教育・子育て、国際文化交流をテーマに人脈を広げながら執筆活動中。2007年10月よりシカゴ郊外に移る。3年間の留学生活を綴った「たのもう、アメリカ。 」(近代文芸社)発売中。

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