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シカゴ発・アメリカ郊外生活

ハロウィーン、感謝祭、クリスマス〜
アメリカの年末メインイベントと地域コミュニティ【vol.3】

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歴史の重みを味わいながら過ごす、年末のイベントシーズン。

 一年が終わりに近づくにつれて、アメリカは最後のメインイベントシーズンへと突入していきます。10月31日のハロウィーンに始まり、11月の第4木曜日(昨年は11月27日)のサンクスギビング(感謝祭)、そして12月のクリスマスと3大イベントが続くこのシーズンは、一年で最も人が移動する時期、そして最もモノが売れる時期と言われています。これら一連のイベントは、独立記念日のようにパレードや花火などで国をあげて派手に祝うものではなく、どちらかというと地域や家族が主体となって静かに盛り上がり一年間の無事や健康を共に喜び分かち合うというもの。
 今回は、これらの行事をからめながら郊外の典型的な年末の様子をお伝えしたいと思います。

近所で一番目立つデコレーションに命をかけるハロウィーン。

「毎年構想を練っては新たにグッズを買い足してるんだよ」と自慢するお隣さんの庭。 この時期は庭褒めならぬ「モンスター褒め」で会話が弾みます。

 日本でも近頃はすっかりメジャーなイベントのひとつになったハロウィーン。もともとは、アイルランドの古代ケルト人が一年の終わりを10月31日と定め、その夜を死者の祭りとしたのが始まりといわれています。この日は、年に一度死者の霊がこの世に戻って親族を訪れる日、日本でいえばお盆と大晦日が一緒にやってきたようなものでしょうか。 冬の厳しいシカゴエリアでは、ハロウィーンは外で楽しめる最後のイベントとあって大人も子どもも準備にぬかりがありません。9月の終わりごろから各家庭の庭先はおどろおどろしいハロウィーンデコレーションで飾られ始めます。悪霊を追い払うと言い伝わるかぼちゃランタン、巨大な蜘蛛や悪魔、ガイコツ、ミイラ、お墓、中にはご丁寧にスモークまで焚く演出のお宅もあり、まさに住宅街はお化けワンダーランド。この時期は近所を散歩するのが楽しくなります。

子どもたちの「Trick or Treat」の声に、おもわずお菓子を奮発

 ハロウィーンを一番楽しみにしているのは何といっても子どもたち。夕方になると、思い思いに仮装した近所の子どもたちが「Trick or Treat (お菓子をくれないといたずらするぞ)」と言いながら家々を回ります。しんとしていた近所がとたんに騒がしくなるのは、学校から帰って用意を整えた子どもたちが一斉に外を歩き始める午後4時頃。昨年は私にとっても初めてのハロウィーン経験だったのでドキドキしながら待ち受けていると、「ピンポ〜ン」と第一号がやってきました。

 そのあとは、堰を切ったかのように次々とさまざまな変装をした子どもたちの襲撃を受け、途中から数えるのをギブアップ。白人、黒人、ヒスパニック、アジアンと人種もバラエティー豊かで「うちの近所にこんなに子どもがいたっけ?」と驚くと同時に、普段なかなか知り合う機会のない近所の子どもたちの顔を覚えふれあいを楽しんだひとときでした。

子どもたちを犯罪や事件から守る、地域のサポート体制。

「Trick or Treat」と言われたら、「Happy Halloween!」と答えてお菓子をあげる。

毎年大きくなっていく近所の子どもたちと思わず話が弾むお隣さんご夫婦。

 子どもたちにハロウィーンを自由に楽しませてあげたいのが親心。しかし、毎年ハロウィーンにからんだ犯罪や事故が絶えないという悲しい現実から目を背けるわけにもいきません。そこで、子どもたちにとって思い出に残るハロウィーンとするために、地域の大人たちが団結して万全のサポート体制を敷いています。事前に配られた地域の新聞には、以下のような「ハロウィーン当日に守るべきルール」が呼びかけられていました。

1)「Trick or Treat」は午後3時から7時まで。
2)小さな子どもは必ず保護者と一緒に回ること。
3)子どもたちはマスクなどの被り物をなるべく避け顔にペイントすること。
4)暗くなってからの訪問時は、服に反射器などをとりつけておくこと。
5)訪問の際、個人の庭や置物などの所有物に触れないこと。
6)訪問は礼儀正しく。きちんとあいさつすること。
7)交通ルールを守ること。
8)訪問歓迎の家は玄関灯を点けて合図にすること。

 日本では、事故が起こるとイベントの存続そのものを中止にすべき論が出るところですが、簡単には犯罪に屈しないのがアメリカ流。犯罪の起きない、起こさせないイベント運営をどうすればいいかをまず考え、一度決めたルールを徹底させます。
  ルールに決められたとおり、当日は大人が必ず子どもたちを背後から見守り、午後7時を過ぎるころには訪問もぴたりと止みました。その徹底ぶりに改めて地域の団結力を見た気がしました。

年に一度の「民族大移動」。サンクスギビングは家族の祭典。

友人の家で毎年開かれるサンクスギビング・パーティには、親しい友人たちも招かれてわいわいと賑やかに食卓を囲みます。

 ハロウィーンが“お盆”だとすると、“お正月”にあたるのがサンクスギビング・デー(感謝祭)。1620年にイギリスからアメリカ大陸に渡ったピルグリムたちが、厳しい新大陸開拓の途上でネイティブ・アメリカンに狩猟や農耕を学んだお礼に開いた収穫の宴がその起源といわれています。
  アメリカ人家庭にとって、サンクスギビングはおそらく一年で最も大切な日。普段は離れた場所に暮らしている家族が、この日だけは一堂に会して食卓を囲むのが慣習となっています。サンクスギビング・デイナーの定番メニューといえば、ターキー(七面鳥)の丸焼きにクランベリーソースとグレイビーソース、マッシュポテト、スイートポテト、など。そこに各家庭伝来の“おふくろの味”なども加わり、食べ物を与えてくれた神に感謝しつつ楽しいひとときをすごすのです。普段は伝統料理や味などには無頓着なアメリカ人ですが(失礼!)このときだけは大いに料理に腕をふるうとか。飽食とファーストフードで肥満が今や大きな社会問題となっているアメリカで、人々が唯一食べ物に感謝する日というのもなんだか皮肉な話です。

子どもたちが心と体で学び感じとる、クリスマス。

 サンクスギビングが終わると、一気にクリスマス〜年末気分が漂い始めます。家々はきらびやかなクリスマスイルミネーションで飾られ、雪景色とあいまって夜はまるでおとぎの国のよう。ハロウィーンといいクリスマスといい、ホリデーデコレーションにかけるアメリカ人の情熱には頭が下がります。
  この頃になると、毎週のようにあちらこちらではクリスマスに関連した催しが開かれます。前回お話したPLB(図書館)では特に子どもたちを対象にしたイベントが多く開催され、そのひとつに「ミセス・サンタの絵本読み聞かせ」というものがありました。日本ではあまりお目見えしないミセス・サンタですが、アメリカではこの時期サンタさんと同じくらいひっぱりだこ。子どもたちはサンタおばあちゃんが読んでくれるクリスマスのお話に吸い込まれるように聞き入っていました。

サンタさんもサプライズで登場。子どもたちもお話に夢中。

教会は、同じ自然の中で生きる住民同士が心寄せ合う場所。

赤ちゃん(キリスト)も含めて出演者はすべて住民。これを楽しみにしている子どもたちも多いそう。

 アメリカ人のほとんどはクリスチャン。どんな小さな田舎町にも必ずといっていいほど教会があります。私の住んでいる町にも、わずか1万3000人の人口に対して12もの教会があります。厳しい自然の中で暮らす住民同士が互いに助け合い生き抜いていくために、教会は宗教的な意味合いを超えて大切な役割を担ってきました。教会は地域の住民にとって大切なふれあいの場、癒しの場であり、子どもたちにとっては第二の学校でもあるのです。日本人の、しかも無宗教の私にとって、はじめは遠い存在だった教会ですが、公の機関が補いきれないきめ細かなホスピタリティーを住民に提供してくれる場所であることに、実際の暮らしの中で改めて気づかされたのでした。

 その教会のひとつで行われたクリスマス行事のひとつが、“Nativity Play”と呼ばれるキリスト生誕劇。教会の中庭におなじみの馬小屋のセットが組まれ、その横にはなんと本物の羊やらロバたち。羊飼いや天使に扮した近所の子供たちが、物語のナレーションに合わせて誕生したキリストを取り囲み祝福します。このようにして、キリストの教えは世代から世代へと教え引き継がれていくのです。

 

神父さんもサンタ帽をかぶって地域の人たちと今年最後のごあいさつ

さて、クリスマスイブ。地元の教会では一斉にクリスマスミサが開かれ、少しおしゃれをした住民たちが続々と集まります。この日は事実上、住民同士が公に顔を合わせる年末最後の機会とあって、人々は口々に「Happy new year!」と声をかけ合い一年の労をねぎらいます。ミサというよりその雰囲気はまるで“忘年会”のよう。

 ハロウィーンもクリスマスも今では日本でもすっかりおなじみのイベントとなりましたが、アメリカとの大きな違いは「特定の年齢層をターゲットにした商業的なイベント」の様相を呈していることでしょう。アメリカでは行事は年齢に関係なく住民生活の一部であり、大人たちがその行事の背景にある歴史的事実や意味合いを子どもたちに教え、子どもたちもそれを学びながら成長していく。さらに、生まれ育った地域独特の慣習やぬくもりを綴り合わせながら、大切な思い出としていくのかもしれません。

次回予告

昨年、アメリカでは大統領選が行われ、アメリカ初の黒人大統領が誕生しました。アメリカ人にとって、4年に一度行われる大統領選は、どんな意味を持っているのか、そして、子どもたちにとっては・・・次回は、大統領選についてお届けします。どうぞお楽しみに!

長野尚子(ながのしょうこ)さん
長野尚子(ながのしょうこ)
アメリカ在住フリーライター。2001年、大手出版社のディレクターを退職後、単身アメリカへ留学。その後帰国し子育て関連誌の編集者を経て、結婚を機に2006年3月より再びカリフォルニア州バークレー市へ。主に教育・子育て、国際文化交流をテーマに人脈を広げながら執筆活動中。2007年10月よりシカゴ郊外に移る。3年間の留学生活を綴った「たのもう、アメリカ。 」(近代文芸社)発売中。

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